SAKE&WHISKY'S GARDEN

昔々、とある会社でお酒をつくっていたハミングバード99の酒飲みレポート。基本的にお酒は、おすすめできる美味しいもののみご紹介しています。

悪魔の囁き? ボウモア10年 インスパイア―ド デビルズカスク

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私、よく悪魔と天使の声が聞こえます。いやいや、そんなにブラウザバックを急がずに、まあもう少し読んでいってくださいよ。特に酒屋さんにいるときに聞こえることが多いんですが、以下はその一場面になります。


私(この銘柄はじめて見るなあ。どんな味なんだろう?)
私(あ、これも気になってるやつだ。こっちは限定版!?)
私(うーん、トニックウォーターを買って帰るだけのつもりだったのに。どうしよう…)
ボソボソ…
私(…っ!?)
私(また…声がッ…!)

 

悪魔(欲しいんだろう?買っちゃえよ…)
私「そんなっ…だって、まだ給料日には遠いし…」
悪魔(でもほら、今日も仕事がんばっただろう?一日の休息ってヤツさ…)
私「…今月はもう、1000円以下のお酒しか買わないって決めたんだ…!もしくはメルカリで探すんだッ。」
天使(でも、メルカリで買ってもメーカーさんには一銭も入りませんよね。ここで買ってあげたほうが酒屋さんもメーカーさんも喜びますよ。経済もまわるし、あなたも美味しいお酒に出会えるかも。win-win-winじゃない?)
私「買います。」
店員さん「アリガトウゴザイマスッ!」


あのですね、こういう場面てふつう天使さんが止めてくれるじゃないですか。なんでお酒の天使さんは悪魔と一緒になって背中を押して来るんですかね。なんなら天使さんが率先して「あたしはこれがいいっ!」てお酒を選んでますからね、どうなってんだ。どこから来たんだこの悪魔と天使は…。


と、いうわけで。今日はこの悪魔のルーツを探るべく、その名を冠するお酒をご紹介します。スコッチウイスキーボウモアの、免税店限定リリース品。ボウモア10年 インスパイア―ド デビルズカスクです。

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ボウモア蒸留所についてのご紹介を少しだけ。
スコットランドの西側、アイラ島(ジュラ島の隣)にある蒸留所。ボウモアは町の名称かつ蒸留所の名称でもあります。「巨大な岩礁」を意味するその名前に相応しく、海辺に建つその姿は(特に暗がりでのシルエットの威容から)海上要塞のようにも見えます。


1779年に地元商人のデビッド・シンプソン氏が創業したそうで、風の吹きすさぶ日は蒸留所に波しぶきがもろにかかるため、建物の中には潮の香りが漂い、おそらくこの波しぶきや島原産のピートに含まれる成分により、ボウモアの酒には潮や海藻、磯の香りが含まれます。こちらで生産されるウイスキーは、ハミングバード99の大好物です。

 

さて、アイラモルトの女王たるボウモアの蒸留所があるアイラ島の街には、あるおもしろい伝説があります。


―――昔あるとき、教会でミサが開かれている最中、人々は教会に悪魔が潜んでいることに気づきいた。住民たちは悪魔を捕まえようとしたが、「なんやねんな!捕まってたまるかい!」と悪魔は海辺へと走り、ボウモア蒸留所のウイスキー貯蔵庫へと身を隠す。


「あかん、こりゃやばいで…。人間本気出し過ぎや…どないしたらええんや…。」と考え巡らす中、ちょうど出荷のためウイスキーの船積みが始まっているのに気が付いた。「これや!」と閃いた悪魔は、ウイスキーとともに樽に潜り込み、島からなんとか脱出することに成功した―――。


この伝説に基づいてリリースされたのが、ボウモア ザ デビルズ カスクボウモア10年 インスパイア―ド デビルズカスクは、ザ デビルズカスクのコンセプトをベースにした免税店限定品になります。


2016年に半年ほど販売されていたようで、オロロソシェリカスクとワインカスク(これが2匹の悪魔のようです)で熟成された原酒をブレンドしているという触れ込みです。パッケージは箱・ラベルとも濃淡の模様がついた深紅のデザインで、不気味ながらも高貴かつ妖艶な雰囲気を放っています。こんなの見つめてたら絶対魅入られるよ…(買っちゃう)。では、いよいよ飲んで行きます。


ストレート /
香り:力強いピート&スモーキー、ウッディな香り。潮の香りや澄んだ甘い香りと、ワインカスクの影響かバルサミコのような食欲をそそる香りが少し。六角やクローブのようにスパイシーさや、タバコの葉、ミルクチョコレートやキャラメルも感じます。店員さんが言っていたサクランボの香りはわからなかった…。甘酸っぱい香りはたしかにしますが。


味わい:スイート&ソルティな口当たり、とても高い満足感をもたらすピートとオークのウッディネス。余韻もかなりピートが感じられ、シェリー由来と思われる焼きリンゴやダークチョコレートのような甘い香味、ワインカスク由来のブドウのドライな香り高さも併せ持っています。美味い。悪魔が潜んだ樽、という触れ込みは飾りではないようです。


ロック /
香り:ハチミツや干し葡萄、紅茶の甘く心地よい香りが開く。次いで黒糖のようなシェリーの甘い香りと、ピートのスモーク、そしてビターさを感じます。


味わい:ストレートに通じるピート&スモーク、ウッディネスと潮気を感じますが、あちらが力強かったのに対しロックではやわらかく繊細に、とても飲みやすくなっています。これもとても美味しい。カカオ分の高いダークチョコレートやココアの香味。


あっ


ゲップしたらたしかにサクランボの風味がッ!?(食事中だったら本当に申し訳ない、こういうブログなんで)。余韻は上述の香味が複合したところに、マイルドなビター、わずかな渋みが加わって満足感を静かに締めくくります。

 

ハミングバード99の個人的評価
お酒名:ボウモア10年 インスパイア―ド デビルズカスク
分類:シングルモルトウイスキー
価格:8000~9000円程(1000ml(!))
アルコール度数:46%
香り:☆☆☆☆☆(アイラモルトの特徴であるピートの香り、2匹の悪魔(オロロソシェリーとワインの2つの樽)の個性を存分に楽しめます。)
味:☆☆☆☆☆(強いピート、潮気、木香、甘味、フルーティーさが複雑に良いバランスで混じり合い、満足感の高い余韻をもたらします。)
おすすめ度:☆☆☆☆☆☆(スモーキーな風味が嫌いでなければ、ぜひ1度お試しください。ボトルは1Lサイズで、長く楽しめます。)

 


一説には、ボウモアウイスキー樽に入ってアイラ島から逃げ出した悪魔は複数いて、樽と共に世界中に散らばったとも言われています。そして、アイラモルトの女王と呼ばれるボウモアの樽に隠れていたのですから、とっても美人なのかも。もしかしたら我々酒好きをそそのかし誑かす悪魔は、アイラ島からやってきたのかもしれません。そう、私の心や、あなたの心にいる奴も。


次は、天使のお酒でも探しますかね?


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